若柳流壽慶會(葉月流三代目家元 葉月綾乃助)
若柳慶次郎 ご挨拶
昨年の今頃より新型コロナウイルスの大流行により、今まで普通の生活を送っていたのが信じられないほど世界が変わってしまいました。私たち舞踊家や舞台に関わる方々だけではなく、世界中の人々にとって大変厳しい世の中となりました。この第五回慶次郎会は昨年5月に開催予定でしたが、コロナの影響により今年の3月に延期となりました。概要でも触れましたが、出演を楽しみにしていた高齢のお弟子さんが昨年の延期決定後に残念ながら旅立たれました。私も門弟一門も大変なショックを受け、舞台に立たせてあげられなかったことを後悔いたしました。舞台を無理にでも開催した方が良かったのか、延期は正しかったのか、いまだに正解は分かりません。しかし、お弟子さんたちにとって稽古は舞台のためのものであり、皆さん舞台が楽しみで日本舞踊を習いに来ているのです。その楽しみを取り戻させてあげたい一心、そして時間は永遠ではない、今を大切にしなければいけないと気づかされたことで開催を決意いたしました。今回、私は静御前と佐藤忠信の主従関係の道行「吉野山」にて狐である佐藤忠信を踊ります。ずっと憧れていた演目であり、芸歴45年、師籍25年の節目に大きな記念となる大作であります。今日に至るまで苦難があり、何度か踊りをやめようと思うこともありました。そんなとき思い出したのは、この言葉でした。上京したときに叔母からもらった手紙の言葉です。